カシミール

15
3月

カシミールとは

私が実際に過ごして感じた「カシミール」という場所や人、そして密接につながる宗教のお話を通してカシミールってどういうところかを知ってもらえたら・・・というページです。
カシミール人家族とカシミール人のように過ごした数カ月の経験をお話します。



俺たちはインド人ではないカシミール人だ


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カシミールへはデリーから飛行機で約1時間半、飛行機の中から見下ろすと雪の残る数千メートル級の山々がそれはもう「美しい」のひとことです。自然の雄大さを感じる一瞬。


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私は2年にわたり、通算で4カ月ほどカシミールにいました。
季節は夏です。
スリナガル市は標高約1600m、カシミールの山々に挟まれた谷あいにある街なので、冬になると陸路が閉ざされます。
1940年代にインドがイギリスから独立してから、カシミールでは、インド・パキスタン・中国との領土争いでとても大変な時期がありました。
私が滞在している間は特に危険なことはなかったですが、ストライキはしょっちゅうあり、いたるところで武装したインド軍を見ましたが比較的穏やかです。


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一見カシミールを守っているように見えるインド軍の人たちですが、カシミールの人に言わせると彼らがいることで逆に問題をもっとややこしくしているとのことでした。
カシミールの人たちが私に言っていた言葉でとても印象的だったのが「俺たちはインド人ではない、カシミール人なんだ」
天国に近いと称される美しい地域に住むカシミールの人の誇り高き言葉です。



カシミールを支える手工芸


kashmir_4_5手工芸の歴史としては、15世紀にカシミール地域を治めていた皇帝がペルシャから技術者を呼び寄せてショールやカーペット、刺繍やペーパーマッシュ、木工細工を作らせて、その技術を庶民にも広めたのが始まり。
スリナガル地域では今でも手工芸を作り、冬に作った手工芸品を夏に観光客に販売するという生活をしている人が多くいます。
スリナガルでは働く人の90%が手工芸品制作または何かしらのアートに携わっていて手工芸と観光業を季節でこなす兼業の人もいます。また、インド国内の観光地で手工芸品のお店をしている人も結構います。


kashmir_6カシミールの手工芸は代々家族で受け継がれてきたもので、それを身近に見ながら子どもたちが覚え受け継ぎ、仕事として成り立たせています。わたしが意外だなと思ったのが、刺繍や織物などの製作も男性のお仕事だということなのでした。



美しきカシミールの魅力


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カシミール中心地スリナガルでの観光といえば、市内にある広大な湖、ダル湖。そしてそこにある水上のホテルはハウスボートと呼ばれ夏によく富裕層インド人のハネムーンカップルや家族旅行を見かけます。

ハウスボートの中は全て手掘りの木目調、輝くシャンデリア、ふかふかの絨毯。カシミールはインド人のあこがれの避暑地で地上の楽園として世界的に有名です。


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カシミールの女性たち


kashmir_9私が滞在した家族の女性たちは基本的に毎日家事をしていました。
夜明けとともに起きてお祈りをし、朝ご飯をつくり、男性や子どもが出かけると掃除洗濯などの家事をします 。
午後は近所の人がおしゃべりに来たり、食料品の買い物にでかけたり、チャイを飲んだりお昼寝したりして過ごします。
たまにこの人誰?みたいな人も来ます。
親戚の子が数週間単位で泊りに来たり、(中には私のような外国人も泊まっています)
夕方は食事を作って家族の帰りとともにチャイを飲みながらおしゃべり。
10時頃ご飯を食べ、ゆっくりしながら11時くらいには寝ます。
毎日はすごくシンプルです。
ほんの少し前の日本もこんな感じだったのかなぁと滞在中よく思いました。
カシミールの人たちは何よりも家族を大切にします。
家族が幸せならば私も幸せ。
言うなれば親戚も家族です。
カシミールの家にいると家族構成かなかなかわからず関係性を掴むのに苦労しました。
というのも、紹介される人たちがみんなおじさんおばさん、またはBrotherやSisterなのです。
カシミールでは80%がイスラム教徒なのでイスラム教の教えによるものだったり、家族とのつながりを大切にするアジア独特の感覚なのでしょうか。
イスラム教を信じている人はたとえ国が違っても兄弟や姉妹という表現をするのでそれもあるかもですね。
とくにカシミールは領土争いに巻き込まれた悲しい歴史、それが解決せず今もなお緊張状態にあることがきっとカシミール人同士の絆をより強くしているのではないかと思います。



カシミール的お祝い

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インドの結婚式は招待客も多くて豪華なので有名ですが、カシミールはさらにすごいです。
旦那さんから奥さんに贈る「金」の量は数百万円分と言われ(これを使う権利は妻にあります。)、結婚式の費用や招待客は数百人規模。結婚式では10~20頭の羊がお祈りとともにイスラム式にさばかれ、招待客にふるまわれます。
そして宴というとみんなの好きな歌や踊り。
お祝いの時は小さなタイコ(小さいジャンベみたいなやつ)を小脇に抱えてたたきながら女性はみんなで掛け合いの歌をうたってその場を盛り上げます。
小さな女の子だって上手にタイコをたたいて歌います。
カシミール伝統のラインダンスみたいな伝統的な踊りもあります。

kashmir_11カシミールの人たちの暮らしは、昔ながらの日本人の暮らしととっても近いのではないかと思います。
考え方や目上を敬う姿勢、礼儀、恩義。
特にカシミールの人たちにとって日本人はアメリカから原爆を2つも落とされ、それでも復興を遂げ、先進国になった真面目で驚くほど優秀な国民であると尊敬されています。
カシミールの人はそんな日本や日本人が大好きです。



カシミールこんなところ

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カシミールにも観光客をだまそうとする人、盗む人、いわゆる悪い人はいます。
お金を持っている人を妬み近所に悪い噂をながす人や、家族でもお金がらみで争って憎しみ合っているところもあります。
まぁ、悲しいですがどこの国も一緒ですね。
感情表現も直接的ですので小さないさかいはしょっちゅうだし、日本ほど住み易い国ではないです。
けど、インドでよく見られる不可触民、道端で寝ているような人たちが、私の知る限りカシミールでほとんど見たことがありません。
誰もがみんな家をもっているし、貧しい人も富む人も大変なときには支えあい助け合う心があります。
イスラム教では年に一度イードの時に喜捨します。
一年で自分が稼いだ分の10%を目安に、自分があげたいところに寄付するのです。
それは自分が行くモスクでもいいし、近くの孤児院でもいい、稼ぎ手のいない近所の娘さんが結婚するからその花嫁道具の足しにってあげたりもします。
これもカシミールの良いところなのかと思います。日本では少し前まで当たり前だった懐かしい感覚、私はそれをなんだかカシミールで感じるのです。